社会のお時間

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本を注文すると遅い…~書籍流通概論①

どうも、りょっちんです。

 実は僕、書店勤務経験がございまして。その時よくお客様から言われてた言葉があります。

「注文そんなにかかるのならAmazonで頼んだ方が早いじゃん!」

「この時代にそんな時間かかるわけねぇだろ!!」

 

 こんな客に対して正直しばき倒してやろうかと何度思ったことか…

 基本、本を注文する時は流通ルートにもよりますが、出版社や問屋に発注すると2週間くらいかかります。

 

そんなに⁉

 

 そう思った人いると思いますが、時代によらず、本の注文にはそんくらいかかります。この理由を知らないから上の2例のような発言があるんですよね。

 なので、本の注文に時間がかかってイライラしている方必見。書籍流通概論と称して、本の流通の仕組みについて教えます。

 

 1.本の流通ルート

 本は出版社が作って、最終的には書店やインターネット販売という形で売られます。ここまでは想像ができると思います。それでは、本はどういうルートで店頭に並ぶんでしょうか?

 書店は出版社から直接的に本を仕入れるということは基本しません(ディスカヴァーなど一部出版社は直接取引します)。ではどうやって仕入れるかというと、本専門の問屋から仕入れています。まあ、卸売業者ですね。この本専門の問屋を「出版取次」といいます。この出版取次がたくさん存在する出版社から本を仕入れ、それを書店に送っています。

書店流通のしくみ

書店流通のしくみ(図)

 ここまではすっと落ちる気がします。ではここから本題です。

2.本が届くのに時間がかかる理由

 お客様から本を注文を書店業界では客注と言います(今後は客注という言葉を多用しますので覚えてください)。書店が客注を受けてから本が書店に届くまで3つのパターンが存在します。そのパターンについて今日だけ理解していってください!

①ブックライナーでの注文

 皆さんが書店で本を頼んだ時、一部の書店では「ブックライナー」というものを使います。ブックライナーとは、書店用お客様注文向け発注システムです。わかりやすく言えば、お客様の注文した商品を早く届けてくれます。だいたい3,4日くらいで書店に届くかと思います。これは結構早いです。これを導入しているお店では、商品を早く入手することができると考えてよいでしょう。
 ただし、そのシステムの管理会社に在庫があることが条件です。このシステムは、ブックライナーという会社が管理運営してます。ブックライナーが在庫を持っている場合は、発注後速やかに発送を行ってくれます。ニッチな商品はおそらく在庫がないので、期待できないかと思います。

②出版取次への発注

 客注を受けたとき、ブックライナーを導入していない場合は、取次に発注をかけます。そして取次に在庫があった場合には取次から商品を送ってくれます。

 ですが、これが届くまで長いのです。というのは、取次は書店から発注を受注してから取次は、各書店ごとに出荷用の箱に商品を入れます。この箱がいっぱいにならないと発送しないんです。この箱がいっぱいになるまでの時間が本が届くのが長い要因なんです。だいたい1週間から10日ほど見たらよいと思います。運送コストを考えると仕方ないところかもしれませんよね…

③出版社への発注

 取次に在庫がないのであれば、出版社へ注文することになります。出版社に在庫があったら上の図のように商品が流れていくことになります。
 ただ、出版社から取次に商品が届くのも長いのです。これが3~10日と言われています。これに取次で箱詰めされる期間を足すとだいたい2週間という計算ができるかと思います。

3.早く本を買う方法

 本を早く買いたいのなら、やることは簡単です。

在庫のあるお店を探す

 これに尽きます。書店にあるのなら書店で買えばよいし、書店にないのならAmazon,楽天に在庫があるのならそこで買えばいいのです。(そもそもAmazon楽天も在庫がなくなったら出版社とかから仕入れるということになろうと思います。もしそうならやはり書店と同じくらい時間を待たないといけないわけで、書店での注文とAmazonを比べるのが書店経験者としては理解できません…)

 もし、本屋に在庫がないのなら、注文する前にまず調べてほしいものがあります。それは、各取次が運営するオンライン書店です。例えば、日本出版販売が運営する「HonyaClub.com」やトーハンが運営する「e-hon」です。これで注文をすると自宅まで商品を届けてくれるだけでなく、近所の本屋で商品を受け取ることもできます。Tカードや書店で使ってるポイントカードなど貯めることができる場合もありますので、ぜひ使ってみてください。
 これらのオンライン書店に在庫がなければやはり取次、出版社への発注になってしまいます。お時間かかるのはいやだという気持ちも十分わかりますが是非とも書店員にイヤミや怒号をかけるようなことはなさらないでください。

 長々となりましたが、複雑な書店流通についてまたダラダラと書いていこうと思うので、興味のある方、業界研究の方是非ともご覧になってください。

 

以上

結局何なの?検察庁法改正問題

本日初投稿です。社会のお時間管理人のりょっちんです。

なれないことを突然しだした若造です。どうか、生暖かい目で見てください笑。

 

 さて、最近Twitterやテレビでコロナに次いで注目されている「検察庁法改正問題」

三権分立の崩壊」、「法治国家終了」とまで言われているこの問題。どこが問題なのか、はたまた、そもそも問題なのか。一緒に考えたいと思います(引用の長ったらしい文章は読まなくても理解できるよう構成につとめてます)。

 

1.今回のポイント

  • 検察官の勤務延長は内閣が決める
  • これまで認められなかった定年延長
  • 検察がもつ権力

この問題についてはぎゅっとまとめるとこの3点が抑えられれば大丈夫です。

2.本編(脱力解説)

 定年延長とはそのまんまの意味で、勤務する者の定年を延長する制度です。例えば、一大プロジェクトを統括するポジションにいる人が定年を理由に突然退職されたら大変です。引継ぎができれば大した問題ではありませんが、違う人に業務を引き継ぐことができなかったり、その人にしかできない仕事だったら困りますよね。そういった場合特例的に定年を延長することで、穴ができることのダメージをなくすというのが目的です。これが検察官に適用するのが問題だというのです。何が問題なのでしょうか?

①検察官の勤務延長は内閣が決める

 今回の改正案の大きな問題点は、ご存じのとおり「検察官の定年延長」です。具体的にはどういうことかというと、

  1. 検察官の定年を65歳まで引き上げ
  2. 検察官の定年は、法務大臣の準則に基づいて延長可(最大3年)
  3. 検事総長は内閣の定めるところにより勤務延長可(最大3年)
  4. 次長検事検事長は63歳で役職定年。しかし、内閣の定めるところにより延長可(最大3年)
  5. 検事正は63歳で役職定年。しかし、法務大臣の準則に基づいて延長可(最大3年)

 とりあえずこんな感じです。「なんで内閣が判断するの?」「なんで法務大臣が判断するの?」というと、検察庁は「行政機関であり、法務省の所轄だから」です。まあはっきり言えば、上司が人事を管理しているとみれば自然なことのように見えますよね?実際、現行法でも検察の任命権は内閣にあります。問題あるんでしょうか?
行政権の一部なんでしょ?法務省所轄なんでしょ?
でもこれが問題なのです。どう問題なのか?ちょっと歴史の時間になります。

②これまで認められなかった定年延長

 検察官にはこれまで定年延長が認められていませんでした。大日本帝国時代までさかのぼります。帝国議会のあるころは、検察官の定年延長は認められていました。それを検察庁法を制定するときに削除したんです。もともとあるものをあえて消したんですから、それなりの理由があるものだと思っておかしくないですよね。

◆定年延長規定の削除についての立法者意思

 検察庁法制定時の議論の中で、定年延長制度の導入は指摘されていました。それについて当時の木村司法大臣はこう答弁されました(よくわからない人は飛ばしても可)。

○伯爵橋本實斐君 更に細かい點になりますが、二十二條に、此の定年が六十五歳とございますが、是は先程御意見も出ましたやうでありますが、人に依りましては六十五歳に達しても、尚有能な方もあり得ることで、殊に非常に練達達識な方でございますれば六十五歳に達しても、之を職を去らせるのは非常に惜しいと云ふやうな例外もありますから、私の考では、原則は六十五歳を定年と致し、例外の場合に更に此の年齡を延長し得るやうな彈力性のある制度を設けらば如何かと存じますが、併し斯う致しますと、一面それに伴ふ弊害もあるかも存じませぬが、是は運營宜しきを得れば宜しいかと思ひます、さう云ふ點に付きまして御意見如何ですか

○國務大臣(木村篤太郎君) 其の點私から御答へ致したいと思ひます、此の年齡の點に付ては非常に議論のある所であります、どの邊を以て退職年齡を定むべきかと云ふことは、相當我々も考慮したのであります、御承知の通り「裁判所法」では、最高裁判所の判事は七十歳、檢察方面に於きまして、少くとも檢事總長の年齡は七十歳迄引延ばして宜いのぢやないかと云ふ意見も出たのであります、併し此の檢察事務は、裁判事務と餘程違ひまして、相當活溌性を有せなくちやならぬ、殊に他の行政官との振合の點から考へまして先づ六十五歳、普通の檢事は六十三歳にした方が宜いぢやないかと云ふことに一先づ落附いたのであります、露骨に申しますると、是は關係方面との間にも色々議論もあつたのであります、我々も隨分退職年齡に付て各國の實例をも調査したのであります、外國あたりでも御承知の通り、隨分高齡な人が裁判官をやつて居ります、現に昨年亡くなりました有名なアメリカの最高法院の長官でありましたストーン氏、是は六十五歳であります、今の最高裁判所の長官は、是はずつと若くて五十八歳になつて居ります、まちまちであります、但し凡そ人間の活動の能力と云ふものは、先づ六十五歳位が相當ぢやないかと云ふことに落附いたのであります、それでは最高裁判所の判事を七十歳にしたのはどうかと云ふことになりますが、是はなかなか人を得るのにむづかしい、殊に新憲法上、最高裁判所の地位と云ふものが非常に高められて、此の長官になる判事なるものは、國民の極めて厚い信頼を得なければいかぬのであります、さう云ふ人を得るのはなかなか容易なことぢやないと云ふ點から色々考慮致しまして、七十歳にしたのであります、是も打明けての話は、關係筋では六十八歳と云ふ議論も出たのであります、我々は七十五歳でも宜いのぢやないかと云ふ氣持を持つて居つたのでありますが、まあ七十歳に落附いたのであります、檢事の方では、總長は六十五歳、普通の檢事は六十三歳、先づ人間の活動能力の點から見て、是等が適當な所ぢやないかと云ふことから、斯樣に落附いた次第であります、併し御議論の點は能く分るのであります、我々と致しましても、實は斯う云ふやうな檢事總長あたりの人は、なかなか容易に見附からないのでありますから、相當高齡の人でもなつて戴くことが望ましいことぢやないかと考へて居りますが、一應先づ斯樣な觀點から六十五歳に落附いたのであります

出典:第92回帝国議会 貴族院 検察庁法案特別委員会 第1号 昭和22年3月28日

 この長ったらしい文章を該当箇所のみまとめると、検察官の定年を決めるにあたっては以下の点を考慮し決定したとしています。)

  • 最高裁判所判事は70歳が定年
  • 人間の活動能力的には65歳が妥当という結論に落ち着いたが、最高裁判所の地位は以前(日本国憲法制定前)より高められており、適格な人材を用意するのは容易なことでないため
  • 検察事務は裁判事務と余程異なり、相当活発性を持たせなければならない
  • ほかの行政官との釣り合いについての考慮

 この理由で定年延長規定を外しました…といってもよくわからないものです。それに実際、「確かにそうだけど…とりあえず定年年齢については総長65、その他63に落ち着いた」といった内容です。確かに「つまびらか」ではないですが、とりあえず、立法者意思で削除されたという事実はこれで分かったかと思います。

 

 削除理由がつまびらかでないことを理由に、検察官の定年の延長の解釈が非でないと解して解釈変更に踏み切ったのです。これをどう思うかは皆さん次第です。

③検察がもつ権力

 検察は行政権の一部と説明しました。しかし、ほかの国家公務員と比べても検察官の権力は強大です。一部を紹介すると、「刑事訴訟の提起」「独自捜査権限」といったところでしょうか。「時の総理大臣を逮捕する権限を持つ」とよく言いますが、まさにそうで、政治汚職等の巨悪を暴いていくのも彼らの仕事です。それだから、検察と内閣は関係性はありながらも距離感を持たせる必要があるのです。これで、検察官が普通の公務員と違うことが分かったでしょうか。定年延長について少し意見が変わったりしましたかね?

 早速議論を見てみましょう。昭和24年の検察庁法改正の議事録です。現行法にもある32条の2の規定(特例規定)についてこう述べています。

○政府委員(高橋一郎君) (略)第三十二條の二は、檢察官は、刑事訴訟法により、唯一の公訴提起機関として規定せられております。從つて、檢察官の職務執行の公正なりや否やは、直接刑事裁判の結果に重大な影響を及ぼすものであります。このような職責の特殊性に鑑み、從來檢察官については、一般行政官と異り、裁判官に準ずる身分の保障及び待遇を與えられていたのでありますが、國家公務員法施行後と雖も、この檢察官の特殊性は何ら変ることなく、從つてその任免については、尚一般の國家公務員とは、おのずからその取扱を異にすべきものであります。よつて、本條は、國家公務員法附則第十三條の規定に基き、檢察廳法中、檢察官の任免に関する規定を國家公務員法の特例を定めたものとしたのであります。

出典:第5回国会 参議院 法務委員会 第12号 昭和24年5月11日

  職務の特殊性をここで政府は認めていました。そして、取扱を異にすべきとする見解もここで明らかです。まあ、さっきの僕の説明でも十分理解できることかと思います。その重要性の観点から、任免権を内閣が持つという形式になっているのです。

 ですが、これは長い間慣例によって介入を断ってきました。

・これまで政界と検察との両者間には検察官の人事に政治は介入しないという確立した慣例があり、その慣例がきちんと守られてきた。

・今回の法改正は、検察の人事に政治権力が介入することを正当化し、政権の意に沿わない検察の動きを封じ込め、検察の力を殺(そ)ぐことを意図していると考えられる。

出典:検察OBによる反対意見書より

  強大な検察の力、内閣の悪事も暴く力を持つ検察の人事に内閣が絡むと、内閣の都合のいいように動けば、定年延長という待遇面での優遇が発生しかねません。これが、検察の中立性を脅かす問題なのです。そう経験者からも指摘されています。

 皆さんはどう考えますか?

おさらい(まとめ)

  • 検察は行政権の一部で法務省所轄の機関。
  • 依然は定年延長が認められていたが、立法者意思で削除。
  • 検察官は時の総理大臣を逮捕できるほどの強大な権利を持つ。
  • それ故にその立ち位置は他の公務員と異なる。
  • 内閣と検察官での適度な距離感が必要
  • 検察の中立性の確保